宴会は22時まで

 春のことがとっても苦手〜〜!というかもう嫌いに近い。気温が上がってきて、日は長くなって、花は咲いて、虫や動物が目覚めだすけど、その全てをもってしても嫌いだ。

 春の生ぬるい風を感じると、これまでの人生で起きた嫌な場面を思い出してしまう。友達が1人もいないクラスにぶち込まれたクラス替え、全然盛り上がらない新クラスでの懇親会、1年間必死に築き上げてきた関係性が残酷にもぶち壊されるあの感覚。とにかく春は嫌なことがよく起きる。あと普通に大学落ちた季節だし!!もう流石に引きずってないけど、落ちてからしばらくはめちゃくちゃ落ち込んでた。

  春と学校嫌いの相性はすこぶる悪く、春といえば学校関連で嫌なことが起きる季節という刷り込みがされてしまった。春とはもう厄災である。

 

 比較的自由を謳歌できるはずの大学生になってもそれは変わらず、春になるたびにウエーー!死ぬ!と思っていた。

 大学時代金がなさすぎて、一駅分の電車賃さえ惜しく、バイト先まで30分くらい歩いて通っていた時があるのだが、春の良い天気の日にバイト先まで歩いていると(私って何してるんだろう)という気持ちになって涙が出てきた。

 春になるとなぜか責められている気がする。別にそんな事実はどこにもないのに、なぜかここにいてはいけない気持ちになるのである。だから春のことが苦手だ。

 

 今も、「春カスがよ〜〜」と思う気持ちは変わらないのだが、今日井の頭公園を散歩したらちょっとだけ春の好感度が上がったので、文章に残しておきたいと思った。

 

 今日はとても暖かい日だった。半袖で歩いている人さえいて、春というよりも初夏に近かったかもしれない。吉祥寺駅周辺はごった返していて、井の頭公園への道ももちろん人でいっぱいだった。

 みんな公園に向かっているし、行ってみるかという軽い気持ちで、私も人の流れに乗って歩いてみた。

 井の頭公園には数回行ったことがあって、スワンボートに乗ったことがある。乗ってみると案外楽しいもので、友達と夢中でペダルを漕いだ。

 公園の桜はほとんど散ってしまっていて、もうお花見の旬は終わったのかな〜などと思いながら半周歩く。

 そんなことはなかった。宴会スペースには人、人、人‼️めちゃくちゃな量の人。ほとんど散った桜の木の下で、みんなが顔を真っ赤にして、でかい声で騒ぎながら各々楽しんでいる。風が吹くたびに桜の花びらが舞い落ちていた。

 その様子を見た時、なんだか、笑ってしまった。みんなこんな花見好きなんだ‼️‼️と思って。私は花見をしたことがないし、正直あまりしたいとも思わない。外で飯食うの、ダルいし。片付けとかもめんどくさいし。そんな私とは正反対の人たちが各々宴会を開いていて、その様がなぜだかわからないがおもしろかった。

 シートを広げて本格的に宴会をしている人たちもいれば、桜の下でただコンビニ弁当を食べている人もいる。なんか、健気すぎワロタと思ってしまった。あと、シートを広げて花見スタイルでマリカーの対戦してる人もいて、おまえら!家でもできること外でやるな!!!とマスクの下で爆笑してしまった。

 なんかいいもの見たな〜と思った。私は春のこと好きじゃないし、みんなが春だ〜!という感じに盛り上がってるのをみるのもあんまり好きじゃないと思ってたけど、限界まで浮かれた人を見るってこんなにおもしろいんだなと思って、ちょっと春と、春に浮かれる人々のことが好きになった。

 宴会スペースの至る所に「宴会は22時まで」という横断幕が吊り下げられている。これにもウケてしまった。やろうと思えば、ここで22時まで騒げるらしい。公園という、閉店とかそういう概念があまりない場所で「宴会は22時まで」という掟が掲げられているのっておもしろい。公園の神様が人間に「22時までならまあ、許容!」と言っているみたいで。

 子供連れの人たちはおそらく夕方ごろには帰るんだろうが、大人だけのグループはきっと22時ギリギリまでお花見騒ぎを続けるんだろうな。ここにきた人たちは22時までのリミットを、精一杯楽しもうとしてる人たちなんだなあと思った。

 

 お花見ができるのは、桜の花びらが残っているその瞬間まで。そして今日井の頭公園で騒げるのは22時まで。色々なリミットが重なって、今あの楽しそうな時間ができているのだなあと思うと、みんなもっと楽しみな‼️みたいな気持ちになった。私ってどの立場で世界を見てるんだ。

 

 春の、リミット付きの楽しみを謳歌する人々を見たら、春ってまあそんなに……悪くないのかも……なあ……という気持ちになったという日記でした。

 

f:id:kmsmniutor:20230401185507j:image